近頃、日本でも性のあり方など多様性のある暮らしについて話題として取り上げられることも多くなりました。
その中のひとつの大きな話題としてLGBT理解増進法案(LGBT法案)があります。
この法案は、2023年6月12日に参議院本会議にて可決され、成立となった法案です。
何度か耳にする機会はあるものの
はてな
- 一体どういった法案なのか?
- 成立したことで何が変わるのか?
といった疑問を抱いている人も多いでしょう。
そこで今回は、このLGBT法案について、この法案の困りごとポイントをお話していきます。
LGBT理解増進法案(LGBT法案)とは?
正式名称は「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」。
性的指向・ジェンダーアイデンティティ(性自認)の多様性に関する施策の推進に向けて、基本理念や、国・地方公共団体の役割を定めました。
LGBT理解増進法案とは具体的に
国や自治体・企業・学校に対し、性的指向やジェンダーアイデンティティの多様性に関する理解の増進を求める法案です。
基本的な理念としては、
性的指向やジェンダーアイデンティティを理由とした不当な差別があってはいけない
ということを掲げています。
この法案が成立するにあたって、国(政府)・企業・学校に対して求められることがあります。
- 国(政府)に対しては、LGBTQへの理解を広げるための基本計画を策定、必要な学術研究の推進、相談体制を整える努力義務が求められます。
- 企業に対しては、LGBTQへの理解推進のために研修を実施すること、就業環境を整える努力義務が求められます。
- 学校に対しては、LGBTQに関する理解を深めるための教育、LGBTQ当事者が相談できる機会を設ける、教育環境を整える努力義務が求められます。
それぞれに努力義務が求められていますが、今後は性の多様性に関する取り組みが法的に要求されるようになっていきます。
この法案に関しては、特に罰則なども設けられていません。
なぜいきなり加速してきたの?
今まで日本はそこまで前向きにLGBTQへの問題に取り組んできたという印象が無かったという人も多いのではないでしょうか。
それが近年急速にLGBT理解増進法案が加速してきました。一体なぜなのでしょうか。
実のところ、もともとは2021年に開催された東京オリンピック・パラリンピックの前に成立することを目指していました。
それに関しては与野党の間で合意されていたものの、自民党内の反対の声が強く当時の成立は見送りとなったのです。
ところが見送りとなった法案をまたいきなり成立に向けて動き出す理由が出来ました。
それが2023年5月19日から始まる広島で開催されるG7サミット。
それまでに可決・施行を間に合わせたいということでした。
当事者から見ると迷走しているように見える?
なんとか可決・施行までもっていけたLGBT理解増進法案ですが、当事者からすると
LGBT理解増進法案ではなく、LGBT差別増進法案なのではないか?
などと、法案に対して疑問を抱く人も少なくありません。
実際にこの法案は少し迷走しているようにも見えます。
本来であれば、この法案はLGBTQといった性的マイノリティへの理解を広げるためのはずでした。
しかし、どこかで一線を引かれたような差別を更に助長するのではないかという不安を抱かざるを得ないものでした。
3つの案が出されている
実はこのLGBT理解増進法案には3つの案が出されているんです。
- 立憲・社民・共産党からは超党派合意案
- 自民・公明党からは与党修正案
- 維新・国民新党からは維新国民独自案
この3つの案を比較すると、
- 性自認の定義が性自認→性同一性に変更されていて、まるでトランスジェンダーを切り捨てるような言い方になっている
- 基本理念が差別はあってはならない→不当な差別はあってはならないに変更されていて、いくらでも逃げ道がある言い方になっている
言い方に違いはあるものの、与党修正案・維新国民独自案に関してはどちらかというと保身に走っている印象があります。
実際に可決・施行された内容としては与党修正案となっていて、当事者としては残念な気持ちが強い法案ともいえるでしょう。
当事者たちは廃案を求めている
余計にLGBTQ差別が目立ちやすくなるのでは?
当事者としてはこの法案は更にLGBTQ差別を助長するものだと考える人も多いです。
定義が性同一性となっているが、性同一性障害を不適切に理解されるのではないか?
『不当な差別』はあってはならないとあるが、差別とはもともと不当なものなのでは?
全ての国民が安心して生活できるとあるが、理解が深まらない限りLGBTQ当事者も安心して生活できないのでは?
可決・施行の目的がG7サミットに間に合わせたいからということもあって、どこか荒削りな印象が強いです。
そのため、LGBTQ当事者からはマイノリティの問題を政治的に利用しないで欲しい・廃案にして欲しいといった声が多くなっています。
特別扱いではなく、普通であることを求めている
このLGBT理解増進法案は、どこかLGBTQ当事者とそうではない人で線引きがされている印象があります。
『全ての国民が安心して生活できる』という文言が利用されているのですから、当事者も安心して生活できるようになるためには
性的マイノリティだからと特別扱いではなく、同じ人間として普通の扱い
をしてもらうことを当事者たちは求めています。
施行されることで考える問題は山積み
多くの人はLGBTQを理解していない
日本は他国に比べても遥かにLGBTQに対する理解があまりなく、実際に法案をつくる政治家たちも理解していません。
最近の若い方は昔に比べるとLGBTQに対して理解がある人も増えてきましたが、なかなかLGBTQに関する教育・研修を受ける機会がないことが原因でしょう。
教育・研修をする人間もしっかりと理解していなければ正しい知識を教えることもできません。
そのため、施行するにあたって教育・研修の努力義務に関しては大きな問題のひとつといえるでしょう。
学校などの日常生活での性別の括り
もうひとつの大きな問題としては、学校や会社など日常生活においての性別の括りをどうするかです。
具体的に性別の括りといってもどんなことを指すのかというと
- 性自認を理由とする差別は許されないをどう解決するのか
- 学校行事やトイレ、修学旅行などのお風呂問題等
特にこれら2つはなかなか解決案が出にくい問題となっています。
この法案は、男女別施設の利用基準を変えるものでも、女性用トイレをなくすものでもありません。
そのため、自称女性とすることで女性用トイレを利用できるわけでも、スポーツなどの競技参加基準を変更することにも繋がりません。
まとめ
今回は、最近ニュースでも取り上げられていたLGBT理解増進法案(LGBT法案)についてお話してきました。
実際に当事者から見れば、差別を助長する法案と言わざるを得ない内容でもあるので、日本はまだまだLGBTQへの知識が浅く少ないといった印象があります。
この法案が施行されるにあたり、しっかりと教育・研修に力を入れる必要がありますし、LGBTQへの理解を深めたいと考える人が増えていけば良いなと思います。
政府・企業・学校に対して求めることも多いですが、私たち当事者も分かってもらえない!と悲観的になるのではなく、お互いに歩み寄れる社会になっていけば素敵ですね。
LGBTQ法案以外にもパートナーシップ条約なども世間には広まっているので、そういった知識も以下から吸収してみてくださいね!
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