異性カップルに限らず同性カップルであっても長くお付き合いをしていると、自然と将来のことを考える人が多いです。
レズビアンに限らず、結婚したい同性カップルは日本にも数多くいますが、現在の日本ではいまだに同性婚は認められていないのが現状です。
ポイント
世界では2001年にオランダで初めて同性婚が認められ、2019年にはアジアで初めて台湾が同性婚ができるようになりました
このコラムでは、日本に住んでいる同性カップルはなぜ結婚できないのか、最近よく耳にする「パートナーシップ制度」とはどんな制度なのか、パートナーシップ制度のメリットやデメリットなどを解説します。
日本で同性婚はなぜできないのか
現在の日本では、同性カップルは結婚できません。
できない理由はいくつか挙げられていますが、その中でも日本国憲法第24条において、
「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」
「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならない」
と記述されていることが大きな要因といわれています。
ここで問題になっているのは「両性」という表現です。現在の日本では、両性とは男性と女性を指しているという解釈が有力です。そのため、同性婚は法的に認められていません。
しかしながら、明確に同性婚を否定している言葉ではないため、今後憲法解釈に変化が起こると、
同性婚を法的に認められるようになる可能性は0ではありません。
結婚できないと何が困るの?
そもそもカップルが結婚できないと何が困るのでしょうか?
法的に認められていない同性カップルは、主に以下の4点で不利になります。
・遺産相続ができない
・配偶者ビザを取得できない
・病院で面会や手術同意ができない
・子どもの親権を得られない
これらは様々な方法で回避することも可能ですが、すべてを完全に回避する手立てはありません。
また、法的に婚姻を認められている夫婦であれば当たり前に認められている権利です。
今の法律に異を唱えている人は多く、実際に大阪地裁や札幌地裁で同性婚をめぐる裁判が開かれましたが、
未だ議論が繰り広げられており、社会問題のひとつとなっています。
パートナーシップ制度とは
日本での同性婚はまだ問題が山積みですが、2015年より自治体による「パートナーシップ制度」という条例が誕生しました。
メモ
パートナーシップ制度とは、自治体が同性同士のパートナーを「結婚に相当する関係であること」を認める独自の制度です。
渋谷区と世田谷区が初めて制定して以降、パートナーシップ制度は全国へ急速に広がり、今では242の自治体がパートナーシップ制度を導入しております(2022年11月時点)。
パートナーシップ制度で婚姻に相当するパートナーと認められる証明書を受け取ると、公営住宅への家族としての入居が可能になったり、民間の家族割を受けられるようになったりなどの待遇を得ることができます。
しかし、あくまで自治体が同性カップルを認めているだけであり、法的に認められたわけではないため、依然として財産分与や子どもの親権、税金の配偶者控除などの権利及び義務を受けることはできない状況が続いています。
パートナーシップ制度のメリット・デメリット
パートナーシップ制度には、以下のようなメリット・デメリットがあります。
パートナーシップ制度のメリット
・公営住宅での同居の保証
・病院で家族と同等の面会や手術同意が可能になる
・住宅ローンの適用
・携帯会社の家族割などの民間サービスを受けられるようになる
パートナーシップ制度のデメリット
・パートナーシップ制度を導入している自治体で暮らす必要がある
・証明書を発行した自治体から引っ越す場合、証明書を返還しなければならない
・証明書の発行にお金がかかる自治体もある
デメリットとして指摘している、パートナーシップ制度を導入している自治体に暮らす必要性や転居の際の証明書返還ですが、パートナーシップ制度を導入する自治体の数が増えたことでこれらのデメリットはカバーされつつあります。現在導入している自治体については、「みんなのパートナーシップ制度」さんのサイトで確認することが可能です。
レズビアンカップルで子どもが欲しいときは
同性婚で特に問題となっているのは、子どもについてです。
自治体のパートナーシップ制度で関係性を保障されたとしても、戸籍や親権に関しては難しく、法の下でパートナーとの間に子どもを設けることは難しいです。
とはいえ、近年女性同士で子育てをしているという家庭も増えてきています。
レズビアンカップルが子どもを迎え入れる方法はいくつかありますが、主流な方法は第三者からの精子提供で出産することです。
しかしながら、現在の日本の法律では男女のカップルしか人工受精を認められていないため、レズビアンカップルは病院で人工授精を受けることができないので、自ら人工授精をしなければならないのです。
そして、出産した女性は未婚の母として子どもを実子にすることが可能ですが、出産していないもう片方のパートナーは子どもを実子にすることはできません。
レズビアンカップルの相続はどうするのか
パートナーシップ制度では遺産相続の権利を認められませんが、実は法的な婚姻関係になくとも遺産を相続することは可能です。同性のパートナーに遺産を相続するには、以下の3つの方法が考えられます。
・遺言書
法定相続人がいる場合、遺産の全額をパートナーへ渡すことはできないかもしれませんが、遺言書を遺すことでパートナーへ遺産を相続することが可能です。また、法定相続人には遺留分侵害請求をする権利がありますが、事前に法定相続人と相談しておけば、問題なくパートナーへ遺産を相続できるでしょう。
また、相続人以外への遺産相続には、通常の2倍の相続税がかかってしまうため、相続税にも注意が必要です。
・生前贈与
遺言書による遺産相続が難しい場合は、生前贈与で相続することも可能です。
ただし、年間110万円を超えると贈与税がかかってしまうため、少しずつ贈与する必要があります。
・普通養子縁組
普通養子縁組は同性のパートナーが法的に家族と認められることのできる唯一の方法です。普通養子縁組には年齢制限がなく、同い年だとしても養子縁組をすることができます。
生前に普通養子縁組を行えば、パートナーを法定相続人と認めることが可能です。
いきなり、パートナーが亡くなった時に事前にこうした対応が行われていなければ、一切何も遺せないことになります。
相手が大切であれば、こうした準備はしておくことに越した事はないでしょう。
まとめ
今回は、国内の同性婚事情とパートナーシップ制度についてご紹介してきました。
日本国内では同性婚が認められていませんが、パートナーシップ制度の普及状況を見る限り、
今後法改正で同性の婚姻を認められる可能性はないとはいえません。
今できる範囲で自治体などの制度を利用しながら、今後の動向に注目していきましょう。